刺しゅうPRO:お客さまはじめてのフォトステッチ作品



当店のお客さまから、
「フォトステッチ作品ができましたよ」
とご連絡がありました。
お伺いして見せていただきましたよ。

おお、これはなかなかすてきな写真刺しゅう!

ちなみに、このお客さま。
洋裁の技術はもともと高い方なのですが、
フォトステッチはまったくはじめての経験です。
使用するミシンも業務用の刺しゅう専用機ではありません。
家庭用の刺しゅうミシン、
brother Innovis D400J です。




枠サイズの制約もありますし、
「データを10万針以下でおさめたい」という事情を考えると、
かなり健闘していると思います。

大隅ブラザーのサポートがあれば、
ほんとにはじめての初心者でも、
いきなりこのくらいは楽しんでいただけるのです。
刺しゅうPRO NEXT、すばらしい!

     *     *     *

「お金はいくらでも払うのでフォトステッチを教えてほしい」
「方法を教えてくれたら、ミシンを買います」
そういうお問い合わせを、
大隅ブラザーはよくいただきます。

たいへんありがたいことなのですが、
現在は、上記のようなお話になかなか対応できていません。

大隅ブラザーは、
当店でご購入いただいたお客さまに、
「サービス」としてフォトステッチをお教えしています。
単独の、それだけを切り離した講習はおこなっていないのです。

ミシン刺しゅう、とくにフォトステッチは、
ミシンの使い方だけでは完結しませんし、
刺しゅうPRO や Photoshop といった、
デジタルワークだけでも成り立たないからです。

総合的・継続的な指導ができないと、
なかなかその方法をお伝えしにくいのですね。

ミシンのメンテナンスはもちろん、
コンピュータの設定からソフトウェアの使い方のコツまで、
大隅ブラザーはぜーんぶまるごと面倒みます。

そういう大隅ブラザーのサポート体制を、
ウェブサイトやウェブログで知っている方は、
何時間も車を運転して、新幹線に乗って、飛行機を使って、
辺境の地のこのミシン屋まで、
わざわざミシンやソフトをお買い求めにこられます。
そのお客さまの心意気。
こちらも気合いが入るじゃないですか。
大隅ブラザーはそういうお客さまのためのミシン屋でありたい。

「教えてくれたら買いますよ」
じつは、
そういうお客さまからのお話を受けつけていた時期があります。

でも、止めちゃいました。

そういうお客さまとは、
いいおつきあいがなかなか続かないのです。

こういう最初に条件を出してこられるお客さまは、
手っ取り早く「技術だけ」がほしいんじゃないかな。
「教えてくれたら買いますよ」と申し出てくれたお客さまで、
大隅ブラザーで買ってくれた方は、いままで、いません(笑)。

知りたいことを知ったら、あとはうやむや。
しだいに疎遠になって、終わり。

でもその後、
ほかのミシン屋でミシンを購入してる、とか、
「大隅ブラザーより安くしてくれたら、おたくから買いますよ」
なんて、ほかのミシン屋との価格交渉の材料に利用してた、
というような話は耳に入ってくるものなのです。
世界はせまいですぞ、おそろしい(笑)。

お客さまがどういう買い物をされるのかは、
もちろんお客さまの自由です。
「1円でも安く」
それをまちがっているとはだれも考えていないはず。
もちろん、大隅ブラザーだってそうです。

けれど、
上記のようなお客さまは、
じつはたいへんソンをされているのです。

フォトステッチの勘所なんて1時間弱もあればお伝えできます。
でも、それはあくまで「知っておくべき最低限のこと」で、
「ほんとうに知りたいこと」というのは、
刺しゅうPRO や Photoshop や刺しゅうミシンを実際に使うようになって、
はじめて、お客さま自身、わかってくることなんです。
「わからないことが、ようやく、わかる」
そういう時期はミシンを手に入れたあとから、くる。

大隅ブラザーのサポートは、
だから「そこからはじめて始まる」のです。

でも、
「必要なことさえ教えてもらったら、あとはさよなら〜」
というお客さまは、
もう、大隅ブラザーに訊けないですよね。
口約束とはいえ「あとで買いますね」を反古にしている。
よそで買ったミシンのことはさすがに質問しにくい(笑)。

かといって、
大幅値引きしてくれたミシン店はというと、
「サポートはできないけれどそのぶん安くしとくね」
もともとそういう店であることも多い。
「これ以上はメーカーのお客さま相談室へ連絡してください」
とかね。

でも、お客さまはここで立ち往生してしまうわけです。

実際、最近、増えているのが、
PR 系の業務用刺しゅうミシンをお使いの方からの、
悲痛なお問い合わせ、というのか「訴え」です。

「売るときだけはいいことを云うけど、
 まったくサポートしてくれない店で買ってしまった」
「値引きには応じるけど、
 刺しゅうPRO の問い合わせはメーカーにするようにと、
 しつこく念を押されたけれど、
 それでだいじょうぶだろうか……」

そういうお客さまの駆け込み寺みたいな当店は、
メモを取りながらお客さまからのお話を伺っているうち、
手元にいつしかそういう業者のリストができてきました。
うーむ。
これはさすがにおそろしくて公表はできませんけどね。

しかし、
PR シリーズなんて、
なんだかんだあれこれ同時にそろえると100万円以上するミシンです。
それが「使われずに放置されてる」なんて話を聞くと、
義憤とまではいかなくとも、
たいへん、こう、複雑な気分になるのです。

吹けば飛ぶような日本の端っこのミシン店のこと。
業界を批判する権利はありませんし、
そんなことをするつもりもありません。

ぐっと堪えて大隅ブラザーにできるのは、
「自店のサポート体制をいかに充実させるか」だけ。

「大隅さんで買ってよかった」
そう云っていただくためには、
技術をしっかり磨いていかなければなりません。
高めれば高めるほど、教えることにも深さが生まれるはず。
お金も時間も手間もかかりますが、
もともと好きなことですから苦なんてちっとも感じません。

フォトステッチ大好き!という方は、
まだまだ少数だと思います。
ずーっと少数という可能性もあります。
でも、そういう方のためのミシン屋でありたい。

なんて、
「年始の挨拶」とするには、
少々グチっぽい感じもするので(笑)、
年末のこの時期、こそっと書き留めておくことにしました。
へへへ。